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犯罪の捜査は、犯罪の現場にはじまり、現場の再現によって終るとさえいわれている。犯罪の現場には、捜査のために必要な有形無形の資料が、どこにでも転がっているのであって、捜査官はこの資料を発見収集して、犯人を探知するとともに、これらの資料を後日に保存して、公訴の維持に努めなければならない。有形の資料、特にそれが後日に残せる物的なものであれば、それを証拠品として押収して保存することができるのであるが、現場の状況といった無形の資料、あるいは有形のものでも人体のように証拠品となりえないようなものについては、検証調書、実況見分調書による以外には、これを後日に残すすべがないのである。これらの調書は、有形無形の証拠資料の状況を描写することによって、その資料の姿を後日に残す大切な調書である。
本書総説より
【本書の特色】① 「第1編総論」では、総説で検証調書、実況見分調書の概念について解説。第1章で検証調書の意義や性質、検証令状、検証の準備、検証の実施、身体検査、実況見分調書について解説。第2章で検証調書の作成、記載事項、検証の経過の記載、事件関係者の指示説明、検証者の意見判断、図面、写真(デジタルカメラの使用)、他の調書との差違、身体検査調書、実況見分調書の証拠能力について、それぞれ具体例をあげながら解説。② 解説では、根拠となる条文を欄外に掲載している。その為、複雑に錯綜している刑事訴訟法、刑事訴訟規則、犯罪捜査規範等の関係がとても理解しやすい。③ 「第2編各論」では、殺人事件、強盗事件、強盗致死事件、放火事件、失火事件、窃盗事件、特殊な検証調書実況見分調書、簡易書式による実況見分調書について、事例を用いながら留意点や注意点をあげて解説。④ 「総論」と「各論」の解説では、内容が関連している部分を参照頁を掲げてクロスリンクさせて解説しているので、有機的・立体的に理解出来る。
【本書の内容】〈第1編 総論〉総 説第1節 検証の意義第2節 検証の性質1 検証は物に対する処分である2 検証は、捜査官が五官の作用によって直接実験認識する処分である3 検証は強制処分である第3節 検証令状(検証許可状)1 令状の請求権者2 令状の請求先3 請求の要件4 請求の方式*捜索・差押・検証許可状請求書−様式第24号5 令状の発付、却下6 検証令状(検証許可状)*検証許可状第4節 検証の準備1 携行品2 関係人への連絡3 検証事項の理解第5節 検証の実施1 検証の時間と天候2 実施計画3 見取図の作成4 立会人の指示説明5 観察の順序と方法6 位置の確定①屋敷内② 屋内③ 道路④ 軌道⑤ 耕地⑥山林、原野7 写 真8 夜間検証の場合の注意9 令状の呈示10 妨害の排除11 検証の中止12 現場における押収第6節 身 体 検 査1 総 説*身体検査令状請求書−様式第42号2 令状とその請求3 身体検査の手続とそれに関する注意*身体検査調書(甲)−様式第44号*身体検査調書(乙)−様式第45号4 身体検査の強制第7節 実 況 見 分1 総 説2 身体についての実況見分3 関係者の立会4 被疑者の供述による実況見分5 実況見分を行う場合第2章 検証調書・実況見分調書第1節 検証調書の作成1 総 説2 検証調書の作成者3 検証調書作成の時期及び場所4 検証調書作成の目的5 検証調書作成の一般的注意事項① 検証調書は簡明直載に書くべきである。② 検証調書は事実に則して記載しなければならない。③ 検証調書に作為を施してはならない。④検証調書は、他人に読ませるものであることに留意して作成しなければならない。6 検証調書の証拠力第2節 検証調書の記載事項1 総 説2 被疑者氏名及びその事件の罪名3 検証をした捜査官の氏名*検証調書(甲)−様式第40号*検証調書(乙)−様式第41号4 令状によるときは、令状を示した旨及び令状を示された者、令状発付裁判官氏名、令状発付年月日5 令状によらないときは、被疑者逮捕の種別6 検証の年月日時7 検証の場所又は物8 検証の目的9 検証に立会った者の氏名10 検証に立会った事件関係者の指示説明11 その他の記載事項第3節 検証の経過の記載(実質的記載事項)1 総 説2 現場の位置3 現場並びにその付近【記載例1】屋内の殺人事件の例【記載例2】屋外(路上)の傷害事件の例4 現場の模様5 被害状況【記載例】殺人事件の被害状況の例6 証拠物件その他【記載例1】【記載例2】第4節 事件関係者の指示説明1 指示説明の性質2 指示説明の証拠能力3 指示説明の具体的な程度(限界)第5節 検証者の意見判断第6節 図 面(見取図の作成)1 総 説2 用紙、用具3 作成要領4 図面の利用法① 「現場の位置」と見取図【実例1】【実例2】② 「現場付近の模様」と見取図③ 「現場の模様」と見取図④ その他第7節 写 真1 総 説2 写真の撮り方3 写真の整理4 写真の利用法【実例】第8節 検証調書と他の調書との差違1 供述調書との差異2 捜索差押調書との差違第9節 身体検査調書1 総 説*身体検査調書(甲)−様式第44号*身体検査調書(乙)−様式第45号2 調書作成上の注意第10節 実況見分調書1 総 説2 実況見分調書の証拠能力*実況見分調書−様式第46号3 調書作成上の注意〈第2編 各 論〉第1章 殺人事件検証調書第1節 殺人事件の検証調書の留意点第2節 記 載 例*検証調書(甲)−様式第40号第3節 解 説第2章 強盗事件実況見分調書第1節 強盗事件の実況見分調書の留意点第2節 記 載 例*実況見分調書−様式第46号第3節 解 説第4節 記載例(その2)第1節 強盗致死事件検証調書の留意点第2節 記 載 例*検証調書(甲)−様式第40号第4章 放火事件検証調書第1節 放火事件検証調書の留意点第2節 記 載 例*検証調書(甲)−様式第40号第3節 解 説第4節 記 載 例(その2)「被害の状況」第5章 失火事件実況見分調書第1節 失火事件実況見分調書の留意点第2節 記 載 例*実況見分調書−様式第46号第6章 窃盗事件実況見分調書第1節 窃盗事件実況見分調書の留意点第2節 記 載 例*実況見分調書−様式第46号第7章 特殊な検証調書・実況見分調書第1節 所要時間の実況見分調書の記載例*実況見分調書−様式第46号第2節 見通し状況の実況見分調書の記載例第3節 隠匿物等発見のための検証調書の記載例第4節 身体検査調書の記載例1 盗品等の発見*身体検査調書(甲)−様式第44号2 身体的特徴の確認(入墨の確認)*身体検査調書(乙)−様式第45号第8章 簡易書式による実況見分調書の記載例第1節 窃盗事件の記載例【事案の概要】*実況見分調書(甲の1)−(簡)様式第5号第2節 傷害事件の記載例【事案の概要】*実況見分調書(甲の1)−(簡)様式第5号第3節 暴行事件の記載例【事案の概要】*実況見分調書(甲の1)−(簡)様式第5号第4節 軽犯罪法違反事件の記載例(同法1条23号)【事案の概要】*実況見分調書(甲の1)−(簡)様式第5号